C02 三角形の折り目の問題

2010年度日本数学会年会の一室で、福岡大学のH氏から次のような問題が出ました。(解答の図はこのページ下部の添付ファイル参照)

三角形の折り目の問題

三角形の紙がある。次の条件を満たすすべての折り方をしたときに、折り目が付かない領域を求めよ。

    • 条件1 ある頂点Aを、三角形の内部の1点に重なるように折る

    • 条件2 そのとき、折り目は頂点Aの対辺と交差しない

(問題終わり)

解答の準備

準備として補題をあげます。証明は少し考えればわかります。

補題

三角形ABCにおいて、問題の条件を満たすように、頂点Aを三角形の内部の1点に重なるように折るとき、折り目は次の領域に隈無くできる。

((領域1 ∩ 領域3) ∪ (領域2 ∩ 領域4)) ∩ 三角形ABC

ただし、

    • 領域1 = 角Bの二等分線より頂点Aの側

    • 領域2 = 角Cの二等分線より頂点Aの側

    • 領域3 = 辺ACの垂直二等分線より頂点Aの側

    • 領域4 = 辺ABの垂直二等分線より頂点Aの側

領域1 ∩ 領域3の図 (左) と、領域2 ∩ 領域4の図 (右)

(補題終わり)

また、角Bの二等分線は辺ACを BA:BC に内分するので、角Bの二等分線と辺ACの垂直二等分線は、角Aと角Cが等しいときに限り一致し、そうでないときは三角形の外部で交わります。したがって、補題において、

    • (領域1 ∩ 領域3) は、領域1または領域3に一致し、

    • (領域2 ∩ 領域4) は、領域2または領域4に一致します。

よって、次の解答を得ます。

解答

三角形ABCを問題の条件に従って折るとき、折り目のできない領域は次の領域である。

領域5 ∩ 領域6 ∩ 領域7 ∩ 三角形ABC

ただし、

    • 領域5 = 角Aの二等分線と、辺BCの垂直二等分線の間の領域

    • 領域6 = 角Bの二等分線と、辺CAの垂直二等分線の間の領域

    • 領域7 = 角Cの二等分線と、辺ABの垂直二等分線の間の領域

(解答終わり)

下の画像で、三角形の内部で色の濃い所が領域5、領域6、領域7それぞれと三角形の共通部分ですので、最も色の濃い所が折り目のできない領域です。

はじめ、この領域は四角形と予想していましたが、GeoGebraで遊んでいると上の画像のように五角形になる場合もありました。このことを調べるために、上の解答を言い換えておきます。

解答の言い換え

三角形ABCを問題の条件に従って折るとき、折り目のできない領域は次の領域である。

領域8 ∩ 領域9 ∩ 三角形ABC

ただし、

    • 角の二等分線3本は内心で交わり、従って平面を6つの領域に分割するが、そのうち外心を含む領域を領域8とする。ただし、外心が6分割された領域の境界にあるときは、領域8は空集合とする。

    • 辺の垂直二等分線3本は外心で交わり、従って平面を6つの領域に分割するが、そのうち内心を含む領域を領域9とする。ただし、内心が6分割された領域の境界にあるときは、領域9は空集合とする。

(解答の言い換え終わり)

解答の言い換えより、次がなんとなくわかります。

多分正しい系

三角形が鋭角三角形ならば、折り目のつかない領域は四角形である。

系の大体の証明

領域8 ∩ 領域9 は四角形である。内心は三角形ABCの内部にあり、鋭角三角形では外心も三角形ABCの内部にあるから、領域8 ∩ 領域9 は三角形ABCの内部に含まれる (本当は証明付けなくてはだめそうな…)。よって、領域8 ∩ 領域9 ∩ 三角形ABC = 領域8 ∩ 領域9 は四角形である。

(系の証明終わり)

上の系の逆は不成立です。